31、ユーラシア大陸横断の動機 車とバイク

趣味の欄にいつも「旅行」と書くほど、僕は旅行が好きで短期の海外旅行はいろんな所に行った。

旅行中で特に羨ましかったのが、アメリカやヨーロッパのシニア達がキャンピングカーでのんびりと長期に渡る旅をしている姿だった。いつかはそんなオシャレな旅行がしたいと思っていたが、自分にそんな長期の休みが簡単に取れるわけもなく、数ヶ月にわたる海外旅行なんてとうてい無理と考えていた。

ところがある日突然襲ってきた東北や熊本の大地震がきっかけになり、さらに同世代の親戚の大きな病気、定年退職した先輩の話を聞いて、長期海外旅行は元気なうちに行かないと次はないと思った。今思うとなぜそう思ったのかは定かではない。(笑)

大枠で決心したものの具体的なところが欠落しているので埋めていくことにした。長期海外旅行のイメージは、バックパッカー、自転車、バイク、自動車、バス、列車、豪華客船だが、自分でやりたいのは若い頃に夢見たバイクでの海外旅行をしてみたいと漠然とそんな思いが膨らんでいった。

検索サイトで「海外ツーリング」のキーワードで先駆者たちのブログを見つけて読み始めると、バイクに乗り始めた少年の頃の戻ったかのようにわくわくした。こんな気持になったのは久しぶりだった。特に「ぽこけん」のハンドルネームで世界中を旅したけんいち氏のブログには、素晴らしい写真やエピソードが満載でとても感動した。気負わず飄々と世界中を旅する姿に憧れた。

バイクの松尾」さんのブログも読み応えがある。ホンダの水平対向6気筒のワルキューレというド派手アメリカンバイクで19年もかけて世界の隅々まで巡られていて、その膨大な情報量に驚く。旅行記を出版後、今は講演等に忙しい毎日を送られている。

あともうひとり紹介したいのが、「鉄馬にのった流れ者、世界一周を目指すおっさんのブログ」で、ニコニコ動画や絵文字を使った非常に楽しい海外旅行記だ。映像や音楽のセンスもよくプロレベルの編集でバラエティ番組みたいに楽しい。

三人のブログはバイクで海外を目指すならぜひ読んで欲しい。情報量、旅のポイント、写真、映像など海外ツーリングの頂点ともいえるブログなので大変勉強になる。

一方、車でヨーロッパを目指すなら、青山さんの「omnipot blog」を読んで欲しい。女性一人で小さな軽自動車でユーラシアを横断してアフリカまで到達している。帰国子女で飛行機免許まで持つ彼女の緻密な情報満載のブログには出発前から旅行中に至るまでかなり助けられた。

4人の先輩達のブログを読めば読むほどユーラシア大陸横断の夢は広がっていった。

まずは初心に戻ってリターンライダーらしく250ccのホンダの単気筒バイクを買い、テストケースとして東北を下道でツーリングをしてみた。走るまでは不安だったが、30代までは毎週のように大型バイクでツーリングしていたので走り始めると思ったより昔とった杵柄で大丈夫な気がした。

しかし、ツーリング中、最新のグーグルマップとインカムとスマホの連動には驚いた。昔と違って非常にスムーズにツーリングができる。1週間ほどで仙台につき、仕事があったので友人宅にバイクを置いて新幹線で自宅に帰り仕事を済ませた。ツーリング中風邪を引いてしまったので1週間ほど静養して再度仙台から北海道に向かってツーリングをした。このツーリング途中に新幹線を使って移動するのも昔と違う考え方でなかなか合理的で納得してしまった。北海道からは、フェリーでバイクだけ千葉に送り、自分は飛行機で成田に移動して、大洗でバイクを引き取り、自宅に帰った。

若い頃であれば全行程をバイクで移動したと思うが、体調や疲れを他の乗り物で上手に補うことで無理なく長期の旅行ができると感じた。ヘルメットやバイクウェアやツーリングの道具も進化していて安全面でも安心できた。

東北ツーリングが帰ってきて、準備を含めて具体案を考えているところに、ネットで知った「ユアン・マクレガーのユーラシア大陸横断のDVD」を見てしまった。カッコイイと思いながらも、そのハードさに一人でバイクでのユーラシア横断は自分のレベルではあまりに無謀と諦めた。このDVDを見なかったら強引にバイクだけで出発していたと思うとゾッとする。

バイクで無理なら車では可能じゃないかと、キャンプ場や道の駅で車中泊をしてみた。バイクに比べると圧倒的に安全で快適だが、イージー過ぎてどうも納得がいかない。バイクでは危険、車は安全、だけど車では行きたくない。そんなジレンマに陥ってしまった。

そんな時、ネットでワンボックスにモトクロスバイクを積んてレース場へ向かう写真をみて、「車にバイクを積んで行けば安全で楽しいのでは!」と閃いてしまった。

バイクや車だけでユーラシア大陸を横断する人はいたが、車にバイクを乗せてトランスポーターしながら横断旅行をする人は僕が日本人初になるかもしれないと思って、我ながらこのアイデアが気に入った。

ユーラシア大陸を駆け抜けるトランポライダーの始まりだった。