32、ユーラシア大陸 横断 車両

トランポライダーのアイデアは自分でも気に入ってしまった。

治安や路面が悪いところやアウトバーンでは安全性を優先して車で移動。広大なオフロードや景色のいいワインディングはバイクでツーリング。車中泊もできれば、バイクを車に積んでいるので盗難も気にせずホテル泊も可能。長期旅行に必要な快適グッズや食料や水も車に積み込みができる。車にバイクを積み込むことで、様々な問題点が一気に解決した。全部まるごといいとこ取りのプランになって思いついた日は大いに納得して乾杯した。

ただ、実際に車とバイクの選定をしていくと課題が多くかなり悩んだ。車はキャラバンやハイエースがトランポには最適だが、高年式のものは中古でもかなり高い。数万キロをディーゼルのハイエースで運転するのも疲れそうだし、海外で人気があるので盗難も心配だ。海外で目立たず、長距離運転が楽で、バイクが積めて、快適性を高めるフルオプションの高年式でも安い車を探さないといけない。ワゴン車を含めて様々な車のレンタルを繰り返し、カタログ値ではわかならい内寸を測り、実際にドライブして絞り込んでいった。

最終的に日産のNV200になったのは、この車にはトランスポーターとしての数多くの利点があったからだ。200キロ近いバイクを積んで数万キロも走るための耐久性・高荷重に優れるリジットサスを持ち、エンジンも商用車らしく粘り強くトルクがあった。実際、バイクを積んでも下ろしても運転性能は変わりがなかった。ハイエースと違い、乗用車サイズなので、ヨーロッパの狭い道でも取り回しがよく、バイクの積み下ろしがしやすい低い床面地上高もよかった。また、この車をレンタルして驚いたことは、着座姿勢が高く視界もいいし、シートが思ったより良く疲れない、さらに見た目よりキビキビと走る走行性能だった。現行車種でヨーロッパでも販売されているので故障にも安心だし、あの厳しいニューヨークでタクシーに採用されるだけの実力はあるなと感じた。

内装が簡素なバンタイプでなく、静粛性に優れるワゴンタイプがあるのも良かった。オプションも防犯に強いスモークガラス、荷物満載で後ろが見えないのでバックビューモニター付ナビ、冷暖房が効率的になる仕切りカーテンなど長期の海外旅行に欲しかったオプションが全てついていた。室内長も長く後部座席を取り外せば大型バイクも積み込みできた。

3000キロしか走っていないほとんど新品の中古車を埼玉日産で160万で買った。アフターパーツは、屋根にルーフボックスを取り付け、バイクの積み込みがしやすいように床に木製フロアパネルをつけた。欧米での右ハンドルはなんら支障にならなかった。むしろ慣れている分だけ運転しやすかった。

実際、数百キロの荷物を積み、ロシアの未舗装路やドイツのアウトバーンなど2万キロを安全になんの問題もなく走りきった日産NV200は信頼できる素晴らしい相棒だった。